「私のガッコの同級生‥イラストシリーズ」です‥
学校を出ていれば 誰にでも同級生がたくさん居るはずです
そんな自分のまわりにいるもしくは卒業して遠くで活躍している
あの頃の懐かしい 同級生たちにスポットを当て
イラストを交えて綴っていきたいと思います‥
その30 タクシーの運転手になった蟋蟀 (こおろぎ)さん
蟋蟀 (こおろぎ) さんは
ちっちゃいころから車が大好きで
いつも 家の中は
トミーのミニチュアカーがいっぱい‥
カバンの中は‥教科書よりも
ミニカーがいっぱい入っています‥
両親と出かけると 必ず助手席に座り‥
はい!ストップ‥右左OK‥
一時停止‥スピード超過‥なんて
子供のくせにうるさいこと‥
でも‥そのおかげで
何回か助かったこともありました‥
そんな蟋蟀さん‥
中学生になっても車に対する想いがつのり‥
通学の自転車に丸いハンドルをつけちゃいました‥
歩行指示器もつけたし
大型のブレーキランプも‥
小さなラジオもつけました‥
でもやっぱりしっくりこない‥
雨が降ると冷たいし
彼女を荷台に乗せても気分が出ない‥
高校になってバイクに変えたけど
やっぱり雨には弱いしおまけに寒い‥
そんなこんなで 18の春‥
ついに免許をとりました
うれしくてうれしくて
その日の夜はバイクを一晩中
乗り回していたそうです‥‥
それから10年‥
ボクが東京に出張し
駅前からタクシーを拾って乗り込むと‥
静かな感じの運転手さん‥
“おぎゃくさん‥今日は寒いべ~‥”‥って
懐かしいふるさとの訛り‥
“混んでっけど 急いで行ぐがんね‥”‥
ボクは ドキドキしながらミラーを覗き込むと
そこには10年ぶりの蟋蟀さんの顔が‥
ボクの存在を知ってか知らずか‥‥
あとは黙って目的地に‥
“おぎゃくさん 着いだよ‥”‥って言いながらも
こっちを見ない‥
知られたくないのかなぁ‥って
ボクもあわただしく料金を払って降りました‥
タクシーの後姿を追いながら‥
一言 声を掛けなかった後悔だけが
残りました‥